ことばみっつ

今日は寒かったです。
今日、北海道にいたひとは、ぜひとも手袋を脱いで雪を手でつかんでみてほしかったです。ここ二、三年で一番良質な雪が町中で触れました。さらっとすくって、ぎゅっと握ります。粉よりも上質の肌触りの雪が手の中でぎゅっと縮まって、そのときの縮まる感触がまたすばらしくよいのです。


ことばみっつに関する設定をSSFC11の感想のところに書いてきました。ここにも再掲しておきます。

以下ネタバレを含んでいますのでご注意下さい。感想に書いたそのままを掲載しています。
みなさま、拙作をお読みいただきありがとうございました。

さまざまな疑問点があると思います。
今回の目標の一つとして、「その人その人のSF理解力に関わらず面白いと言ってもらう」というものがありまして、「わからなくても面白い」を目指していました。どうやらあんまりうまくいっていないようです。SFで受賞するならこの方向性がよいのではないかと考えたのですが……、力不足でした。
一人一人の疑問点にもお答えしつつ、作者である私闇米が当初考えていた設定をお知らせします。話に広がりを持たせる為にあえてどうとでもとれるような設定をかなりちりばめているので、これはあくまで私が考えていた設定であり、物語世界を確固とする為のものではないです。読者さんが感じてくれた物語世界が、その読者さんにとっての物語の設定だと思っていただけると嬉しいです。自分の意図しない新解釈や新設定が出てくるところに読んでもらう楽しみがあります。

誰も読まないとしても書きます。

1、SFにする必要があったのか。
SFにしたかったからSFにした。では元も子もないのですよね……。冗談はともかく、言語喪失がテーマだったので、どのようにすれば言語喪失が不自然ではないかという観点からこのような「ハーフ」と「クオーター」がでてくる世界になりました。
2、ハーフ、クオーターって何?
身体をどの程度人造のものに置き換えているかという指標です。一昔前の、携帯電話に対するイメージと考えてもらえるとわかりやすいかもしれません。その本人にとっては、そのことは普通であるというのが重要でして、つまり、「それが自然になっている世界」を書きたかったのです。本人にとっては、「便利だから」以上の理由はありません。電車の中で猫もしゃくしも携帯電話をいじっている光景、これは一昔前ならありえない光景でした。物語世界では、主人公が特別ではなく、保守的な街が特別です。「新しいタイプの疾患」を描きたいためにこういう設定になりました。
3、デュアルコアウイルスって何?
生身と機械の両方に感染するウイルスです。コンピュータウイルスの進化系であり、誰かが作ったものです。技術がいきつくところまでいったことによる疾患です。普通のウイルスでは説得力がないのでこのようになりました。
4、結局主人公、言語喪失してないっぽい。ずるい。
主人公、言語喪失に対抗する為に意識的に難しい言葉を用いようとしていました。アルジャーノン方式も考えましたが、挫折。用いる漢字を、小学校で習う漢字にして一学年ずつ下げて行くという案も、時間がないため挫折。結局一気に切り替えることにしましたが、唐突になりました。
5、赤子は死ぬのか?
死にません。「理解力のある人間が、言語無しに思考する」という条件に当てはまらないからです。赤ん坊は、生まれた時は、各種感覚器官が調整されていません。生きているうちに、徐々に外界からの情報を理解できる情報にかえる術を学びます。似た例として、一度も目が見えた事がない人に視神経をつなげたとき、どのように物体の形状を認識させるのかという研究が行われているという例をあげておきます。
6、なぜ一人称?
一人称で言語喪失をする過程を表現しようと思っていたのですが、結局失敗してました。
7、結局デュアルコアウイルスって何?
物語世界の科学者の認識は間違っています。言語で思考しているかどうか、というのは、他者とコミュニケートしないと判定できないという裏設定でした。本人が言語で思考していると考えていてもそれが言語であるかはわからず、無くなってしまった言語の枠組み内で考えているにすぎない可能性があります。他者とコミュニケートしてはじめて自分は言語を用いていないことに気づき、枠組みの外側に意識を向けてしまったため、言語によって取捨選択し整理されていた外界の情報が生のままつまり無限の分解能で脳を浸食しました。イメージとしては、コミカルなアニメなどで、崖から飛び出して走り続けて、下に地面がないことに気づいてから落下するというのと似ています。「言語はないのに言語の枠組み内で考える」というのを文章として表現できなかったのが大問題でした。
8、なぜ死ぬ?てか死んだ?悟り過ぎ。
言葉を失う失わない以外に、機械部もウイルスにやられて昇天しかけています。なので、言葉を失わなくても処置しなければ死にます。それはおいておいて。無限の情報量が入ってきても、解釈しようとしなければ死にません。見ようとしなければそこにあるのが見え、見るとやられる感じです。太陽を直接見る事は可能ですが、直接見ると目がやられるのと似ているかもしれません。「赤血球〜」が分かってしまったがために、その代償で脳が破壊されはじめています。この分かってしまったときにどのくらい分かってしまったかというと全てです。ああややこしい設定。
9、最後の二行ってどういう意味?
どう解釈してくれても構いません(笑)。作者の設定では、すべてを理解した精神はどのような物質にも留まっていられないので(すべて限界があり壊れる)、彼の肉体は死にました。すべてを理解した精神は、世界全てを基盤にする以外選択肢がありませんでした。世界全てを基盤にするというのは、言い換えると「塵に還る」ということなので、結局精神は死んだのと同じ状態になります。死と違うのは、塵に還るには緩やかに無限に時間がかかるということです。
以上設定でした。長っ。誰も読まないなまさしく……。