アークエンジェルプロトコル

アークエンジェル・プロトコル (ハヤカワ文庫SF)

アークエンジェル・プロトコル (ハヤカワ文庫SF)

これは古本屋で見つけた本です。なかなかいい買い物をしました。
作品が書かれたときは911以前(2001年以前)です。舞台は第三次世界大戦が起きたあとの世界。この世界での第三次世界大戦では核爆弾が使われたわけではなく、「メデューサ爆弾」が使われています。この爆弾は爆風に触れたすべてのものをガラス質に変えてしまうものです。メデューサ爆弾が落とされた都市は核が落とされた都市と違って形が残っています。しかし、生物も非生物もすべての姿がガラスに変わった都市です。都市はさながらローマ時代火山噴火で埋没したポンペイのように、その瞬間を永遠に保存しています。戦争後、生き残った人たちは防護服を着て、人の形をしたガラスたちをすべて砕く作業をしました。そして、戦争が終わってしばらくして、世界は信頼を失墜した科学に変わり、宗教が生きる指針となっています。また、今日のインターネットのすごい版の「リンク」があります。主人公は刑事崩れの女探偵。彼女のもとにギリシアローマの彫刻を思わせるような絶世の美男子が依頼人と現れます……。

ポストサイバーパンクではなくサイバーパンク的な電脳世界が存在している世界+ハードボイルドにファンタジーの味付けをしたような作品です。なかなか良かったです。科学で理解できない領域が世界内に存在しているという意味で、SF(サイエンスフィクション)よりかSF(サイエンスファンタジー)なのかもしれないなと思います。女探偵ハードボイルドが読みたい人には特におすすめです。